私の危惧していたとおりと言うべきか、当然と言うべきか、中國國家副主席習近平は天皇陛下に拝謁するにあたって「会釈」にすらならない程度にしか頸を曲げることをしませんでした。

さすがは江澤民の子飼い、太子党のホープと目されるだけのことはあります。
(ちっとも誉めるつもりはありませんが…)
陛下との会見はおよそ20分程度で、習近平は胡锦涛主席からの『诚挚(誠実・真摯)』の挨拶と祝意を伝えたとされています。
もちろん、天皇陛下と「政治的」な話題を口にしてはいけないことくらい、習近平も事前にしっかりレクチャーを受けているはずですから、そのようなタブーこそおかしませんでしたが、鳩山首相との会見に当たって、習近平は本音を出しました。
彼は鳩山氏のことを「自民党政権を倒した『中左翼政府』の首領」として称賛した上で、「日中関係は中國外交の極めて重要な位置を占めている」として戦略的互恵関係の強化で認識を一致したというのです。
話が少々ずれますが、千五百年以前に存在した他の君主家で、今もなお君臨し続けているものは、世界のどこにもありません。
皇室に名字がない事実も、天皇の王朝の古代史的な古さを証しています。
それは、天皇家が日本人が歴史が始まって以来知っている唯一の王朝だからなのです。
言いかえれば、皇位を占めている血縁集団が世界最古の在位の君主家だということが、その「正統性」を証明しているわけです。
ところが夏后(夏王朝)以来、二十数回にもわたる動乱で覇権争いを続けてきた中國にとっては、「万世一系の天皇」という支配者が居るわけがなく、したがって「連続する血統による君主の正統性」というものが理解できません。
それでは中國ではどのようにして支配者が自らの「正統性」を誇示しているかというと、それは前王朝の政治運営の失敗や腐敗、さらには民への過酷な課税や使役などの悪行に対して「天から命を受けた」者が兵を挙げ、旧政権を倒し新政権を作って、「前政権の悪行を列挙する」ことによって、間接的に自分たち新政権の正統性にこじつけるという、歴代の歴史書の編纂を行ってきたからです。
この「旧政権=悪、新政権=善」という、中華的儒家思想「善悪二元論」は、現代でも東~東南アジアでごく一般的に見られます。
例えば韓國では、政権の座から追われた大統領や首相は、必ずと言っていいほど何らかの罪で投獄されたり、不自然な死をとげたりしています。
フィリピンやタイ、インドネシアなどでも、およそ「前大統領」や「前首相」と呼ばれる人物は、ほとんど何らかの罪で裁きの場へ引き出されています。
もちろん、これらすべての人が冤罪であるというつもりはありませんし、日本の方には腑に落ちないことでしょうが、政治の頂点に登りつめた者が、自らの「威光」をもって、親類縁者の便宜をはかり、利益をもたらすということは、亜州的価値観である「氏族主義」からすれば「善行」です。
話がズレすぎました。習近平が鳩山氏と会談した件に戻りましょう。
二十数回もの王朝の栄枯盛衰を繰り返した中國の、漢人である習近平にとって、現在の民主党政権は「悪政を倒した」というだけで「正統」となりうるのです。
臺灣との関係強化を目的とした超党派の議員連盟である「日華関係議員懇談会」の多数を占める自民党議員が、8月30日の総選挙で多数落選したため、中共はこれを「天命」だということにしたいのです。
属國に冊封を授けるにあたっては、いくつかの決まりごとがあります。
まず第一に、付庸國の國王が新たに即位する場合、その旨を宗主國に使者を送って伝えなければなりません。
宗主國側は、皇帝が新國王の即位を認めるという勅書等をたずさえて、冊封使を派遣します。
このとき、「付庸國→宗主國」の使者については、その「品位(位階)」の定めはありませんが、、「宗主國→付庸國」の使者については「正三品以上」などと厳格に定められ、かなり地位の高い人物でなければその任に就くことはできませんでした。
この「使者の身上」について見れば、「日本→中國」の使者が小沢氏という「政府の閣僚ではない一政党の幹事長」で、「中國→日本」の使者が習近平という「次期主席最有力候補」という高位ポストであることが、中國側の視点ではどういう意味を持つものかがお分かりいただけると思います。
その上で、「日中関係は中國外交の極めて重要な位置を占めている」と言い切るねらいは何なのか…
「日出處天子致書日沒處天子無恙云云」とあえて書くことで、「対等の國」として冊封体制に組み込まれることを拒んだ千四百年も前の先人の気概はどこに行ってしまったのでしょうか。


by よもぎねこ
「朝貢團」なのでしょうか?